臨床試験に見るカムザイオス®~海外第Ⅲ相試験 EXPLORER-HCM 結果詳細編~
2025年3⽉、閉塞性肥大型心筋症に対する選択的心筋ミオシン阻害剤である
カムザイオス®が承認されました。
今回は、カムザイオス®の承認の根拠となった複数の臨床試験のうち、
海外第Ⅲ相試験であるEXPLORER-HCM試験について、主要評価項目の結果に加え、
LVOT圧較差やバイオマーカーを含む副次評価項目・探索的評価項目の結果についてもご紹介します。
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- 2. 禁忌(次の患者には投与しないこと)
- 2.1 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
- 2.2 妊婦又は妊娠している可能性のある女性[9.5参照]
- 2.3 イトラコナゾール、クラリスロマイシン含有製剤、ボリコナゾール、ポサコナゾール、リトナビル含有製剤、コビシスタット含有製剤、セリチニブ、エンシトレルビル フマル酸、ロナファルニブ、ジョサマイシン、ミフェプリストン・ミソプロストールを投与中の患者[10.1参照]
- 2.4 重度の肝機能障害(Child-Pugh分類C)のある患者[9.3.1参照]
2025年3⽉、閉塞性肥大型心筋症に対する選択的心筋ミオシン阻害剤である
カムザイオス®が承認されました。
今回は、カムザイオス®の承認の根拠となった複数の臨床試験のうち、
海外第Ⅲ相試験であるEXPLORER-HCM試験について、主要評価項目の結果に加え、
LVOT圧較差やバイオマーカーを含む副次評価項目・探索的評価項目の結果についてもご紹介します。
EXPLORER-HCM試験の概要
本試験では主要評価項目として、運動耐容能〔最⾼酸素摂取量(pVO2)〕及び臨床症状(NYHA心機能分類)を指標とした投与30週での臨床反応が評価されました。この臨床反応は、「pVO2の1.5mL/kg/min以上の増加、かつNYHA心機能分類の1度以上の改善」又は「pVO2の3.0mL/kg/min以上の増加、かつNYHA心機能分類の悪化なし」のいずれかを達成した場合と定義されました(図6)。
また、副次評価項目は図6のとおりで、運動負荷後のLVOT最大圧較差、pVO2、NYHA心機能分類、Kansas City Cardiomyopathy Questionnaire(KCCQ)-23 臨床要約スコア(CSS)、Hypertrophic Cardiomyopathy Symptom Questionnaire(HCMSQ) shortness of breath(SoB)ドメインスコアの5つが評価されました。
患者背景
本試験の対象患者の平均年齢は両群とも58.5歳であり、NYHA心機能分類Ⅱ度の患者の割合はカムザイオス®群で71.5%、プラセボ群で74.2%、Ⅲ度の患者の割合はそれぞれ28.5%および25.8%でした。
<カムザイオス®の初回投与前30⽇間の前治療>
β遮断薬又はCa拮抗薬のいずれかが投与されていた患者の割合は、カムザイオス®群で96.7%でした。
<試験期間中の併用薬>
β遮断薬を併用した患者の割合はカムザイオス®群で76.4%、プラセボ群で74.2%でした。
Ca拮抗薬を併用した患者の割合はそれぞれ20.3%および13.3%でした。
また、いずれの前治療歴もない患者の割合はそれぞれ3.3%および12.5%でした(図11)。
主要評価項目
本試験の結果、投与30週での主要評価項目として定義された臨床反応(複合評価項目)を達成した患者の割合は、カムザイオス®群36.6%、プラセボ群17.2%であり、統計学的な有意差が認められたことから(p=0.0005、層別化CMH検定)、カムザイオス®のプラセボに対する優越性が検証されました(図13)。
副次評価項目
5つの副次評価項目は、逐次仮説検定の結果、いずれもカムザイオス®群とプラセボ群との比較において有意差が認められました。順にご紹介します。
まず、投与30週の運動負荷後のLVOT最大圧較差のベースラインからの変化量(平均値±SD)は、カムザイオス®群で-47.2±40.31mmHg、プラセボ群で-10.4±29.59mmHgであり、カムザイオス®群において有意な低下が認められました(p<0.0001、ANCOVA)(図15)。
続いて、投与30週のpVO2のベースラインからの変化量(平均値±SD)は、カムザイオス®群で1.40±3.115mL/kg/min、プラセボ群で-0.05±3.017mL/kg/minであり、カムザイオス®群で有意な改善が認められました(p=0.0006、ANCOVA)(図16)。
また、投与30週のNYHA心機能分類がベースラインから1度以上改善した患者の割合はカムザイオス®群で65.0%、プラセボ群で31.3%であり、カムザイオス®群で有意に⾼値でした(p<0.0001、層別化CMH検定)(図17)。
そして、投与30週までのKCCQ-23{ CSSのベースラインからの変化量(平均値±SD)は、カムザイオス®群で13.6±14.42、プラセボ群で4.2±13.68であり、カムザイオス®群で有意にスコアが上昇しました(p<0.0001、MMRM)(図18)。
探索的評価項目
探索的評価項目のうち、LVOT最大圧較差に関する結果をご紹介します。
投与30週の安静時LVOT最大圧較差のベースラインからの変化量(平均値±SD)は、カムザイオス®群で-38.625±29.5256mmHg、プラセボ群で-5.503±27.9387mmHgでした(図20)。
また、投与30週のバルサルバLVOT最大圧較差のベースラインからの変化量(平均値±SD)は、カムザイオス®群で-49.103±34.3727mmHg、プラセボ群で-12.130±30.9683mmHgでした(図21)。
続いて、バイオマーカーに関する結果をご紹介します。
NT-proBNPのベースラインからの経時的変化はこちらのとおり推移しました。投与30週のNT-proBNPのベースラインからの変化量〔中央値(Q1, Q3)〕はカムザイオス®で-555.5(-1535.0, -162.5)ng/L、プラセボ群で-5.0(-169.0, 192.0)ng/Lでした(図22)。
安全性
主な有害事象(いずれかの投与群で発現率10%以上)として、浮動性めまい(カムザイオス®群21.1%、プラセボ群13.3%、以下同順)、呼吸困難(14.6%、10.2%)、上咽頭炎(12.2%、14.8%)、頭痛(12.2%、7.8%)が報告されました(図26)。
また、重篤な有害事象はカムザイオス®群14例(11.4%)、プラセボ群12例(9.4%)に認められました。カムザイオス®群で2例以上に認められた重篤な有害事象は、心房細動(カムザイオス®群3例、プラセボ群5例)、失神(カムザイオス®群3例、プラセボ群1例)、ストレス心筋症(カムザイオス®群2例)でした。プラセボ群の突然死を除き、本試験のカムザイオス®群における重篤な有害事象で治験薬との関連は認められませんでした(図26)。
投与中止に至った有害事象はカムザイオス®群で2例(失神、心房細動)に認められ、死亡例はプラセボ群で1例(突然死)でした(図26)。
また、本試験の投与中止基準である、安静時LVEFが30%以下に低下した患者は認められませんでした。投与30週までにLVEFが50%未満に低下した患者は、カムザイオス®群7例、プラセボ群2例でした(図26)。
まとめ
今回は、症候性HOCM患者251例を対象とした海外第Ⅲ相試験である、EXPLORER-HCM試験における有効性・安全性の結果をご紹介しました。
EXPLORER-HCM試験では、主要評価項目であるpVO2及びNYHA心機能分類を指標とした臨床反応に加え、LVOT最大圧較差やバイオマーカーを含む副次評価項目・探索的評価項目について検討されています。
カムザイオス®をHOCM治療の選択肢のひとつとしてお役立ていただけますと幸いです。
カムザイオス®のご処方にあたっては、本剤の医薬品リスク管理計画書に規定されている医療施設の「施設要件」を満たしている必要があります。施設要件についてご確認いただき、本剤のE-Learningをご受講いただきますようお願いします。